シューツリーにひと手間を

新しく靴を買うと、どのシューツリーを使うかは悩ましいものである(それもまた楽しみのひとつではあるが)。
購入当初はぴったりフィットしていても履きこんでいくうちに変化してくるし、そもそも製品のバラつきも多く、経験と運にもよるところがある。
実際に展示品でフィット感を確認した上で同サイズを買って帰ったものの、緩くて使い物にならなかったこともある。

フィット感はある程度妥協せざるを得ないと思うが、それとは別にひと手間かけたほうがいい場合があるのでその紹介をしようと思う。

下は比較的評判のいいスレイプニル・トラディショナルであるが、シェットランドフォックス・インバネスに装着したときに問題があることに気がついた。


可動パーツのこのエッジが


ツリーを取り出すときにライニングに引っ掛かり、わずかではあるがめくれてしまっていた。
もともとかなりタイトなフィットのところ、取り出すときに引っ掛かりを感じていたのだが無視していたのが悪かったようだ。


そこでエッジの面取りをしておこうという試みである。

ホームセンターや100円ショップにもあるスポンジブロックやすりを用意する。
写真の番手は#60と#120であるが、#120単体だけでもいいし#240でもいい(数字が小さいほど目が荒い)。
紙やすりが付属するツリーもあるが、もちろんそれでも構わない。


単にこの部分の面取りをするだけでいいのだが、せっかくなのでツリーを分離して行った。


分離は横のネジを緩めるだけであるが、元に戻すときのため「現状から何度(何回転)締まったところで止まるか」を覚えておく。今回は720度(2回転)だった。


#60を使って軽く削ってやると簡単に面取りできる。その後#120でならしてやる。
エッジが滑らかになったのがわかると思う。


左側が処置後、右側が未処置のもの。


両方とも処置したところ。


ついてで本体側も全体的に軽く処置しておく。
今度はやや細目のスポンジやすりを用意したが、こちらも何でもよい。
目的はささくれ等の除去(このツリーでは全く問題ないが)と、全体的に平滑にすること、すべてのエッジの面取りである。


普段は目につかないこんなところも


シャフト部分も磨き、開閉の妨げにならないようにしておく。


他にも前後の伸縮の動きが悪い場合は、踵パーツを分離してリューターで穴を滑らかにしたりすることもある。
踵パーツは、ある程度上下左右に振れるガタがあるほうがフィットしやすいと思う。
靴の中心線とツリーの中心線は必ずしも一致するわけではないので。

処置が終わったらウェスなどで掃除して元に戻すが、可動パーツの取り付けネジは、軽く締め切った状態から調べておいた角度だけ戻してやる。

このネジはサイズ調整するために任意で緩めることができるが、最低でも3回転緩めても分離しない程度には締めておく必要がある。
木材のネジ山なんて簡単にズルズルになってしまい、抜けてしまうためだ。

処置前後の比較。
左が処置前、右が処置後であるが、拡大するとエッジが滑らかになっているのがわかる。


問題の部分もこのとおり。
取り出す際の引っ掛かりは一切なくなった。


問題とは書いたが、このスレイプニル・トラディショナルは安価なツリーと比べると相当出来がよい。表面は滑らかでほとんどの部位はきちんと面取りしてあった。


さて、今回の作業は非常に簡単で、分離せずやれば数分程度、分離して全体を処置しても10分程度である。

すべての靴・ツリーの組み合わせで必要とは思わないが、
・ エッジを滑らかにすることで靴にダメージを与えることがなくなる
・ 全体的に平滑にし、ささくれ等を除去することでスムーズに出し入れできる
・ 履き口周辺についた靴クリームを除去できる
などの効果がある。

もちろんニス仕上げのものには処置できない(ニス仕上げの意味がなくなる)が、局所的にはやってもおいてもよいと思う。

安価だけと形はいい、でも細部の仕上げはやや甘い、といったツリーがあれば、ひと手間掛けてやっておいて損はない。

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