革靴をしっかりメンテする

革靴をしっかりメンテ


コロナ禍により在宅勤務が増え、革靴を履く機会が激減してしまった人も多いようだ。
私もいっときは在宅勤務が増えたものの3月あたりからは出勤が多くなってきたが、これからまたどうなることやら…。

履かない間は靴をメンテする必然性も薄れてしまうが、その分しっかりメンテする時間もあったので、先日行ったメンテを紹介してみる。


通常、靴のお手入れは使用前後のブラシがけと、4~5回履くごとに乳化性クリームを塗布するだけでこと足りる。
だが時には細部までケアしてやることで、ますます綺麗になるし、寿命も延びる。

写真は前回のメンテから約3ヶ月・10回程度履いたショーンハイトSH-111。
まずはいつものようにブラシをかけ、シューレースを取り外す。



アッパー

最初に、水で湿らせた布切れで全体そして細部を拭き取る。
特にウェルトとの隙間は、通常掃除しにくい箇所なので念入りに。
汚れの程度によってはステインリムーバーを軽く使い、同じ工程を行う。




ステインリムーバーは賛否わかれる製品のひとつであるが、
 ・力を入れてゴシゴシ擦らない
 ・何度も繰り返して使わない
 ・荒い生地を使わない
などに気をつけ、軽く撫でる程度に用いれば特にデメリットはないと感じている。

古いクリームが落ちてくるとついつい繰り返し使ってしまいたくなるが、多くても2~3回と決めて、まだ落ちそうでもやめる勇気が必要である。

また黒以外の靴では、より慎重に(頻度を下げて)使ったほうがよい。

ウェルト

上面を歯ブラシなどで擦り、目付に溜まった汚れを掻き出す。
日常のブラッシングで毛が当たるところではあるが、本気で掃除したいときはある程度の硬さがあったほうがいい。




その後、さらなる汚れ落としと保革のため乳化性のクリーム(ここではサフィールのレザーバームローションを用いた)をブラシに少量を取り、ウェルトおよびアッパーとの隙間に塗りこむ。
数分待って乾いたら、綺麗に拭き取っておく。





コバ

コバは知らないうちにあちこちにぶつけてしまうので、自然と傷んでくる。
補色だけでもよいが、余裕があればヤスリ掛けをするとより綺麗になる。




ただしツメコバなどの場合は、形状にあった方法で行う必要がある。
ヤスリ掛けの一般論としては、対象に対して荒すぎず・細かすぎない番手で行うのが鉄則。
適切な番手がわからないときは、高い(細かい)番手から使って様子をみること。
番手は低い(荒い)ものから順に上げていき、途中を省略しないようにする(#120から#600など飛びすぎると、時間ばかり掛かってちっとも綺麗にならない)。
また、角(エッジ)が丸まってしまわないよう、当て物を使うなど配慮したほうがよい。
今回手入れしたショーンハイトは、少しツメのある平コバというか、中途半端な感じだったので マイナスドライバーにペーパーを両面テープで貼り付け、注意してやってみた。
部分的に丸コバでもあるので、ここにはスポンジやすりを使った。
完全な平コバだと、ブロック型がちょうどよいのでおすすめである。
粗い番手から細かい番手へ、やり過ぎないように磨いてみた。





右が磨き終わったら状態。
この後、補色を行う。







いろいろな製品があるが、サフィールのエッジ・アンド・ヒールレストアラー(Edge & Heel Restorer)が簡単で、レザーソールにもラバーソールにも使えるのでおすすめ。
マジックで塗る感覚なので、失敗することはないだろう。





乾いてから乾拭きすると、艶が出てくる。





ソール

レザーソールだと専用のお手入れ製品があるので、それを使うのが手っ取り早い。
ただ実際に使ってみた感想として、わざわざ専用の製品を使わなくても、タワシで擦って軽く汚れを落とし、濡れ雑巾で拭いて水分を与え、デリケートクリームを塗るだけで十分とも感じている(余裕があれば後でビーズエイジングオイルやミンクオイルを追加する)。
ソールはアッパーのようにデリケートではないので、適度な水分・油分を与えることができれば何だってよい。




ライニング

まずはブラシ(100円ショップで購入)などを使ってつま先にたまったゴミを取り除き(OA用のダストブロワーを用いてもよい)、靴の内側、ライニングとインソールをアルコール入りのウェットティッシュで拭う。






保革のためライニングにモゥブレイのデリケートクリームを薄く塗る。
ライニング全体に塗るときは、さらっと仕上がるモゥブレイがおすすめ。

踵部分はこのように擦れていることが多いが、ここにはサフィールのデリケートクリームを塗る。





サフィールのデリケートクリームはモゥブレイと比べて油分が多いので、このような用途にはより適している。
レザーバームローションでも悪くはないが、ロウ分が多いとツルツルしがちなので注意。





忘れがちだが、縁の部分にもしっかりと塗っておく。
靴に限らず、モノは端のほうから傷んでくるものである。






点検

最後に、あらゆる箇所のステッチを点検し、糸のほつれがないことを確認する。
ほつれがあったら直ちにライターで炙り、縮んだところでしっかりと押さえ、これ以上被害が広がらないように処置をする。
写真は(気づくのが少々遅れてしまったが)ほつれを処置した02PR。


仕上げ

あとはいつものようにお手入れをして、完了。
日頃のお手入れのおかげか、「しっかりメンテ」の前後で見た目の差があまりないのが残念(?)ではあるが。


この「しっかりメンテ」は、見栄えを整え、不可逆的な劣化を最小限にするためのもの。

いつものお手入れにちょっと付け加えてやってみてはいかがだろうか。

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